〈作者と内容〉
ノーベル文学賞受賞作家、トニ・モリソンが書いた「青い眼が欲しい」は衝撃的だった.モリソンはアメリカの黒人女性についての物語が圧倒的だが、ブック・クラブで彼女の作品を読むのは初めて.「黒人少女達はこんなコンプレックスを今も持ち続けているのだろうか?」というクエスチョンを持ちながら読み進めた.
大恐慌時代のアメリカでクローディア(本の中では「私」)が語る、主人公ピコーラという黒人少女の話.小学生のピコーラは父親が刑務所に入ったことでクローディアの家族と一緒に住み始めるが、周囲の差別や家庭内暴力などで荒んだ環境は、自分の眼が青く容姿が可愛ければ生活が変わるに違いないと信じている.青い眼になるよう毎日祈り続け、一年経ってもその願いは叶わず、環境も変わらない.偽牧師のソープヘッドにも青い眼が欲しいと訴える.学校では白人の同級生は夢のような生活をしていることを想像し、裕福な黒人の同級生にも憧れる.望まない妊娠、差別など常に苦境におかれるピコーラ.
(本の後書きには、この本も否定され続け、やっと25年後に出版された、とある)
〈ブッククラブでの感想〉
人種によって住む地区が明確に分かれているシカゴで学生時代を送った私は、地元のニュースで外見的なことは分かれど、内面的な誇り、劣等感、生活事情は実際に知り合いがいないと分からない.現在はウェブやソーシャル・ネットワーク等で知ることができるが、その深さと複雑さで、2~3日頭から離れない話もあった.
社会学で習った「劣悪な環境で育った場合、その環境から抜け出そうと高等教育を受けたり、活動を始める人はいるけれど、実際は周囲や家族の反対や、足の引っ張られ等により、その劣悪な環境にとどまる人が多い.特に黒人はその問題が深い」ということ.誰しもコンプレックスはあると思うが、読後もやはり「こんな幼くても社会が決めた「美」で自己否定し、アメリカ人でもコンプレックスと苦労の塊のような人が存在するとは!」というのが私の感想.幼少の頃から「青い眼」さえあれば自分の問題は解決する、と思わせたのは社会の強い風潮であり、幼児でも「白人は幸せな人たち」と感じていたのだろう.ピコーラに訪れるあらゆる不幸と不運(特に父親のこと)は、出たらめ霊媒師や差別主義者の白人店主とのやりとりの場面などで、内面と外見のコンプレックスがすべての行動と感情に出てくる.時には読み進めるのが辛い場面もある.ブック・クラブの課題図書にならなければ、この「読むべき本」は読破できなかったと思う.また、アメリカの黒人社会の深さを知らなかった時に読むとショックで眠れなかった気がする.時代は違うが、ミシェル・オバマの人生とも対照的で(どちらも人種を気にしながら通学する少女時代だったけれど)、苦労や努力が報われるかどうかで人生は両極端となる.また「自由」という定義の広さも、メンバーとの会話の中で考えさせられた.
そして、メンバーの感想を一部抜粋すると、、、
「African Americanの少女の話は読んでいて胸が痛くなりますが、読書によってこういう気持ちにさせられるのはさすがだと思いました.」
「今月の本を日本語で読んで「この文章は英語で何と書いてあるのだろう?」と思うところがたくさんあり、時間がなくなり英語で読めなかったのが残念.Toni Morrisonのドキュメンタリー映画をご覧になったSさんが彼女の別の作品もぜひ読んでみたい、と言われていたのが納得いくほど彼女の作品は強烈で、同じ人種でないと理解できないのかもしれないが私もまた読んでみたい.」
「Bluest Eyesは、とても圧倒される本でした.そして私にはとても助けになる本でした.それにしても黒人の人たちがくぐり抜けてきた環境というのはなんと厳しいものなのでしょう、そして今でも.実は図書館でToni Morrison原作の"Beloved" の映画を借りて見始めたのですが、あまりにも暗くてそして複雑怪奇でギブ・アップしてしました。Wikiを読んでようやく意味はわかり始めましたがこれは"The Bluest Eye"の上をいく暗さです.
「Bluest Eyesに出会えて、読み通せて光栄でした.重い歴史事実をつきつけられ、作者の鋭い洞察と人間愛に圧倒され続けましたが、消化不良感も含め、皆さんと共有できてほっとしました.Toni Morrisonの生み出す文学、私もまた是非チャレンジしたいです.先ずはビデオ探してみます.」
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