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執筆者の写真Yuki T.

4/16/2021 本のレビュー「銀河鉄道の父」門井慶喜著


<本の内容>


教科書にも登場する「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」などで有名な童話作家の宮沢賢治.その父親、宮沢政次郎 (1874年生まれ) の半生を描いた門井慶喜による作品.


岩手県で裕福な質屋を経営する政次郎.親子3代で暮らす一家の主として、威厳を保たねばならない.一方で息子の賢治は周囲の貧しい農民から吸い取った利益で恵まれた生活ができたという思いに苦しめられる.賢治は教師と作家の両立を選び、仏教や農村の生活改善に情熱を注ぐことで知られているが、学生時代は虚弱体質ながら人造宝石や飴工場経営など、あれこれと浮かぶ突拍子もない計画の資金を政次郎に頼る放蕩ぶりが原因で、一時は親子の関係が断絶したことも記されている.家族にまつわるエピソードとして、優秀だった娘が肺炎で死に至ったときを含め、政次郎は子供たちが病気になる度に自ら一晩中看病する様子も書かれている.


<ブッククラブ・メンバーの感想>


· 最近「親は子供の成長に口には出さないが一喜一憂している」というブログを読み、私の親もそうだったに違いないと、この本を読みながら、自分を振り返るきっかけにもなった.自分が親になることがなかったので、子供と共に成長するという機会がなかったけれど、すこし理解できた気がする.父親の威厳を保つために、本音が言えなかった宮沢賢治の父親のように、どこの国の家庭でも「父親の威厳」を保つために、父はアタフタできない様子には共感する.


そして娘の臨終のときも、賢治に押されてしまい遺言が記せなかった場面を読み涙しながらも、滑稽でもあると感じた.そして、賢治の一貫性がない人生も意外であった.同じ岩手出身の石川啄木と混同し、清貧を絵にかいた様な人かと思っていたが、父親のお金でキャンディ工場や人工宝石などの夢の様なアイデアは、どこか童話につながったのかもしれない.


· 宮沢政次郎の息子に対する深い愛情、そしてその父の視線でとらえた宮沢賢治の姿を描いたところが楽しく読めた.政次郎が思っていることを言わずに自分の胸の内にしまっている場面が何度もあったが、私の父は生前無口で、今思えば我父も「いっぱい言いたいことがあったのだろうなぁ」と回想している.


· 読んだ後、心が暖かくなる気持ちがする本でとてもよかった.ブック・クラブでメンバーの一人が、「このお父さんに母性的なところを感じる」との感想が印象に残った.


· 父親、政次郎の目線で描かれた宮沢賢治はとても面白かった! 読みはじめた時は「一体どこまでが本当の話なのか」気になっていたが、途中から気にならなくなるほどのめり込んで読んだ.宮沢賢治のドラ息子ぶりにはちょっとびっくりしたが、終盤でそれが変わってホッとした.




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